2014年1月15日水曜日

写真のなかの幸福

写真を撮り、それを見返す行為はなんと残酷なんだろう。
別れた恋人の写真を燃やす、というのが映画や小説でよくあるけれど、
ではその写真をいったいいつ眺めるべきだったのだろうか。
死ぬほど幸福だった時間を切り取るために、感動をおさめるために、
その記憶の記録のためにシャッターを押す。
写真の中のひとびとはそれが幸せな時間だということを自覚してはいない。
なにもない日常で、なんとなく撮った写真を
見返した時の「ああこのとき楽しかったなあ」と思う感覚を、
写真を撮った時に抱いてはいない。
川を歩いていて、この時間が永遠だと思っても私はシャッターを押さない。
押したところで何の意味もない気がしているから。

すべての写真は、見返した時に「そこにあった」幸福を感じ、
それが失われたことを知るためにある。